お絵かきブログ/絵を描いて見えたもの

何かをつくったり、アートに触れたりする楽しさを、共有できたらもっと素敵。

インスピレーションを得る方法

今日も引き続き美大のお話。

 

前回の記事はこちら

seitua.hatenablog.com

 

前回はざっくりと美大のカリキュラムについて書きました。

通常の大学だとゼミ等が始まるまでは、毎日固定のメンバーと顔を合わせる機会って少ないかと思うのですが、美大は毎日実技の授業があるので、固定メンバーと日々顔を合わせることになります。私の通っていた大学の日本画専攻は大体30人くらいなので、本当に小中高のクラスみたいな感じ。

美大生は個性強すぎor絵ばっかり描いててコミュ障、、、なんてこともなく、過ごしやすい空間でした。絵が好きっていう共通項があるからっていうのもあるかと思いますが、すぐ仲良くなれた。

しかもなんかこう、、、変に群れることもなく、ノリはいいけど各々のペースを尊重してくれる個人主義な感じで、楽園のようでした。

まあこれはたまたま当たり年だったのかもしれないけど、人と違っていい世界、合わせなくても受け入れられる空気があった。

 

 

実技の授業が始まって、教授からこんな話がありました。

「表面的でないものの見方を磨くこと。それが発想力、創造力に繋がります。」

その方法として、

  • 「絵を描く対象、相手、ものの気持ちや生き様について考えること」
  • 「見えない部分を大事にすること」
  • 「五感をフルに使うこと」

などが挙げられました。

 

 

日本画の最初の課題作品はユリの花だったので、それを例にとって説明すると、

  • ユリを見てただ描くのではなく、ユリの生き様について思いを巡らせること。今、ユリがどんな気持ちでここにあるか想像してみること。考えることで独自の切り口でユリの姿を捉えられるかもしれない。
  • 普段見えていないユリの根を描いてみる。構造を知ることもできるし、普段見えていない根からパワーを感じるかもしれない。逆に儚さを見るかもしれない。より深く知り、深く考えることができる。
  • ユリを見るだけではなく、触って感触を確かめたり、香りを嗅いだりする。目で見たものを写すだけでなく、身体で感じたものをどう描くかを考える。

こんな感じです。

 

 

自分なりの視点を持ち、考え、それをどうやって表現するか。常に意識して対象と向き合う。

これが重要なこととして語られました。

 

正直急にできるもんじゃないですね!

私自身最初のユリの課題は見たまんまのごく平凡な絵が出来上がりました(笑)

同級生の中には、独自の世界観でユリを捉えて描いてきた子もいて、すげぇぇ…ってなりましたね。自由に捉えて描いていいという感動と刺激をもらいました。

 

 

 

この「表面的でないものの見方を磨く」っていうのは今も本当に大事なことだと思っていて。

前にちらっと紹介したんですが、岡潔の本に「情緒を深める」ことの重要性が書いてあって、これは大きな意味で同じことを指してるんじゃないかと思っているんです。

インスピレーションやアイデアは枯渇する、なんて話もありますが、ひらめき型の向き合い方をしているといつかピークを過ぎてしまう。でも「情緒を深める」ことは、歳をとってもより深めていくことができ、枯渇しない。

 

若い頃っていうのは(うちの子を見ていても思いますが)、初めて世界と接する感動があって頭も柔軟で、その鮮烈で豊かな出会いと感情はそりゃあもう強烈でくっきりしてエネルギーに溢れてて、そこに頼ってアイデアを出していたら、歳を取るとだんだんインスピレーションが沸かなくなってきた…ってことになると思うんですよ。

でも「表面的でないものの見方」を磨き、「情緒を深める」ことで、より深く美しい世界に入っていくことはできる。そうすればインスピレーションの泉が枯れることはない。

 

わかりやすくクリスマスを例に挙げてみます。

子供の頃、サンタさんの存在を信じていた時のクリスマスって、本当にキラキラしててワクワクで、魔法のようで、サンタさん来るかなってドキドキしながら眠りについてました。

もう少し大きくなって、デートでイルミネーションを見にいくってなったら、子供の頃とは違うときめきと興奮があってワクワクしました。

今、あの頃みたいなドキドキ、ワクワクはない。思い出して絵にすることはできるかもしれないけれど、今まさにワクワクドキドキしている人が描いた鮮烈さには敵わないと思う。

でも一方で新たに「懐かしい」という感情はゲットした。「どこか懐かしいクリスマスの絵」が描けるようになったかもしれない。

知識を身につけることもできる。クリスマスのいわれや逸話をたくさん調べ、自分の考えをまとめたら、また違った絵になるだろう。

世界のクリスマスのあり方を目にし、無事に普通のクリスマスを過ごせることのありがたみを噛み締められるのも、昔にはできなかったこと。そこからより深いテーマを探り、絵にすることもできるだろう。

 

こうやって考えれば、歳をとるにつれ、どんどん新しい世界を見られるようになっていくって感じます。

だからこそ今後も「表面的でないものの見方」を意識し「情緒を深める」ことを目指して活動していきたいですね!

 

 

 

 

 

ここからは私個人の話。

情緒深めよう運動の一環として個人的に勉強している江戸文化や植物。いい本見つけちゃったので紹介します。

浮世絵が好き、江戸文化に興味がある、植物が好きな方におすすめのこの一冊。

豊富な浮世絵。江戸時代の花文化という独自視点での解説。めっちゃ面白いです。

江戸時代、サボテンの鉢植え売ってます。驚きじゃない?

浮世絵は知識と教養があるとすごく楽しめそうだな〜

 

ちなみに混同されがちですが、美大日本画専攻で浮世絵は扱いません。あれはジャンルとしては版画。今になって浮世絵の魅力を知ってハマってます。