写真を見れば描けるのに、自分で描こうとすると思いつかない。何をどうすればいいかわからない。
それは想像力の問題ではなく、描き方の違いを知らないだけかもしれません。
想像力あふれた絵を描く人はスラスラと思いつくままに描くことができると思っている人がいますが、実はそうとも限りません。
私自身、写真とは違う表現の絵を描いていますが、かなり下準備をしています。美術大学時代の同級生もその‘‘下準備’’は、ほとんどの人がやっていました。
具体的に言うとスケッチ、再構成、下図作りといったものになるのですが、この記事では私が特に重要だと思っているスケッチに焦点を当てて考えたいと思います。
目次
写真模写とスケッチの違い
さて、ここで疑問が生じる方もいると思います。
「写真を見て描くのとスケッチするのって一緒じゃない?」
「なんでわざわざスケッチするの?」と。
写真を見て描くことはできるけれど、それ以外のやり方では描けないという場合、
写真を見て描く=写真を写す=模写をしている
ということになります。
模写はいかに正確に写すかという作業です。
決められたゴールに向かってひたすら真似をします。
一方スケッチは、見たものを自分なりに解釈して組み立てる作業だと考えています。
対象の美しさを表現するにはどう描けばいいのかを考えながら、そのモノらしさを捉えて描けるよう観察し、調整します。
スケッチとは
実際の例を見てみましょう。
まず断っておきたいのですが、私が言う「スケッチ」は雑なラフのことではありません。

雑に描いて「スケッチしたけどあんまり意味ないよ」と言う方がおられます。
しかし、スケッチの本質は対象の美しさやそのモノらしさを描きとろうとすることにあります。
なので、「なんとなくこんな形でしょ」で済ませた絵にはあまり意味がありませんし、私はそれをスケッチと呼んでいません。
私がスケッチと呼ぶ基準は「その絵をを参考に新たに絵を描けるか?」です。作品を描く際に資料となり得る自分の絵をスケッチと呼んでいます。
では次に
模写のように形を写すことを意識して描いた絵(左)と
スケッチとして自分なりに解釈をして調整した絵(右)を見比べてみます。
どちらも同じモデルを描いたもので、恣意的に上手い下手を出していないつもりです。使っている鉛筆も同じです(BとHの2本)。
変えたのは意識するポイント。
実際の形に近いのは左の絵です。
右の絵は、私が感じた子供の顔の素敵な部分(具体的にはほっぺたの膨らみや、顎から首にかけての丸み、髪の毛の柔らかい感じ)を強調して描いています。
左の絵の方がいいけど…?と感じる人もいるでしょう。
大事なのは、「自分が感じたモチーフの良さ」を出せているかどうかです。
感性が違う人が見れば左の方が好きであったりします。
どちらが好みかという話ではなく、スケッチで何をしているかという視点で見ていただければと思います。
スケッチのやり方
スケッチをする時の具体的な手順はこうです。
①どこが美しいか、言葉にしてみる
②どう描けば伝わるか実験する(線に強弱をつける、色を強調する、少し大袈裟に描いてみる、一部を省いてみるなど)
③モチーフらしさを損なわないよう確認、調整する(失われている場合は②をやりすぎている可能性あり)
スケッチには正確さも必要だと思っています。
あまりに独創的すぎると「その絵を参考に新たに絵を描けるか?」という資料的な側面が失われてしまいます。モチーフの構造をよく観察するのは必須だと言えます。
良さを強調しつつ、モチーフらしさがどこにあるかを確認しながら描いています。

スケッチ例1
花のベルのような連なりが良いと思った→遠近の濃淡を誇張してみた
茎の細くしなやかな感じが美しいと思った→茎の線を細く繊細に、一本ずつ見やすいように配置

スケッチ例2
開き切るチューリップの迫力→線を強めに描く
茎が上に向かうパワーを感じる→茎の曲線を少し大袈裟に描く
スケッチが作品作りにつながる
模写には決められた正解があるのに対し
スケッチは自分でゴールを決めて描く必要があります。
写真を見れば描けるけれど自分で描こうとすると何をどうすればいいかわからないという人は、「写すことはできるけれど自分でゴールを決めて表現する方法を知らない」という状態かなと思います。
スケッチをして、自分が良いと思った部分を強調して描くことが、そのままオリジナル作品を作る基盤になります。
スケッチしたものをコラージュのように組み合わせるだけでも、写真模写とは違うオリジナル作品になるからです。
写す行為に慣れていた人は、強調して描くことに慣れず、最初のうちは苦戦するかもしれません。
でも1からフリーでオリジナル作品を描こうと言われるよりも、はるかにイメージしやすく、描き始めやすいのではないかと思います。
おわりに
偉そうに書きましたが、私もまだまだ修行中の身です。
以前、私の下準備の様子を見て「へー!こんなふうに描くんだ〜!」という反応をもらったことがあり、どんな風に進めるのかを知りたい人もいるのではないかと思い、私のやっていることをできるだけ具体的に書いて見ました。
絵画ライフ、一緒に頑張っていきましょう!