お絵かきブログ/絵を描いて見えたもの

何かをつくったり、アートに触れたりする楽しさを、共有できたらもっと素敵。

本を読む/日本画の技巧・完売画家

今日は最近読んだ本の紹介です。

 

まずはこちら!

 

これはね、もうね、本当にそっちの世界の人向けの本でして、日本画の昔の作品がどうやって描かれたかを研究しているものです。わかりやすく書かれてますが内容が割とディープなので、日本画中級者以上向けだと感じました。

昔の画家の技巧の素晴らしさを感じずにはいられない本。

 

ただ絵を描く人へ向けたメッセージと言いますか、スケッチのコツなども書かれておりまして、その辺りは日本画以外に関わる人にもなかなか面白い内容かと思います。

 

一部、私なりにまとめてみます。

 

幼い頃というのは、どんな絵を描いても褒められます。感性のままにのびのびと描かれたものがよしとされるわけです。しかし年齢が上がるにつれて「本物のように描ける人がうまい」という評価がつき始めます。美大受験も基礎力が問われ、デッサンによりふるいにかけられます。しかし入学するとそれだけじゃダメだと言われ、また感性や自由な表現を絵に取り入れることを求められます。でもやっぱりずっとそれだけじゃだめ。新しい技術を取り入れ、学ぶことが必要。そんな風に技術と感性の間を行ったり来たりしながら、画家は高みを目指していきます。

然るべき時に、技術と感性を磨き、取り入れていく。どちらもずっと必要なものです。けれど行ったり来たりしているのは同じ場所ではなく、螺旋階段のように、振れ幅を小さくしながら上へ上がっているのです。

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うまく説明できたか怪しいですが、これはなるほど!と思いました。

スケッチに関しても勉強になる記述が多々ありましたので、気になる方はご一読を。図書館にもある、かな?

 

 

 

もう一冊はこちら。

完売画家

完売画家

Amazon

 

画家として食べていくための指南書。

 

正直に申し上げますと、私、この方をテレビの情報番組で見かけて、いけすかない奴だなぁと思ってました。

でも好きな作家さんがこの本を「私が画家として仕事をしてきて感じたことが詰まっている」と紹介していたので気になり始め、読んでみました。

そうしたら、いけすかないイメージが完全に払拭され、むしろ割と好きになりました(笑)

 

中島健太さんはいわゆる「売れる絵」をリサーチしながら描いているタイプで、職業画家感が強いですね。

良い絵を描くにはお金が全てではないけれど、画家として食べていく一つの方法論としてはとても大切なことが書かれている本だと感じました。

そして中島健太さんは美術業界をより広げていきたくて、芸術家がしっかり稼いで生活できる世の中にしたい、芸術家を応援したいという気持ちで活動されているのだということがわかりました。

 

デッサンについて、模写について、早く描くことについてなど、必要な練習についても書かれています。業界について知りたい方にもおすすめ。

 

また、自分の絵の適性を知る方法として、好きなことを掘り下げるのではなく、嫌いなことを省いていくというやり方を紹介しており、目からウロコでした。嫌いなことを省いて、じゃあ何ができるかってことを工夫していく。勉強になりました。

 

 

 

 

 

ここから先、最近思ったこと。

 

いい絵を描くには、技術的な練習はもちろん大事なんだけれども、人間的な深み。そういうものも必要よなって。

 

「君は今、椿なの。僕は今、住職だよ。」という言葉がありまして。

ずーっと自分の中に残っていた言葉だったので、調べてみました。

法然寺の梶田真章さんの言葉でした。

 

仏教的な倫理観が美しく表されたいい言葉だなと思う。

梶田さんは西洋的な「人間と自然の共生」という考え方が嫌いなのだそう。

人間は自然の中で生きているのに、人間を別個の存在として扱うのはおかしい、と。

街の中でもアスファルトの下に大地はあるし、自然の恵みを食べて生きているし、全てが支え合って生きているんですよね。全体でひとつのいのち。それに対する感謝。本当の共生は、そこにある。

 

京都のお寺(どこだったか忘れてしまった)で、大きな紙に「今、あなたを生きている」と筆で書いたものが貼ってあるのを見たことがありました。

その時は「あなたを?」となったのですが、今思うと梶田さんの言葉と一緒なのかなと思う。

 

目の前にあるこの椿は今、椿の生を生きている。私は今、住職として生きている。そしてあなたは今、あなたを生きているんですよ、と。

 

 

すごい世界観!死生観!

 

まあ解釈が合っているかはわからないんだけども。

 

でもこういう、なんていうのかな、人間的な深みを得たいなって思うわけです。

勉強は終わらない。